2021/06/23

今日もていねいに。25

みなさん、こんにちは。
松浦です。

若い頃、尊敬するある方に教えていただいたことがあります。
それはお辞儀の仕方です。
なぜならある日、その方が大勢の前でお辞儀をした姿がとても美しく、
すてきに思えたからです。

お辞儀をするには、
力を抜いてまっすぐに立てるかどうか、
これが大事だと教えてくれました。
まずは、鏡の前で、まっすぐにちからを抜いて立つ練習をしなさい。
最低五分は立っていられるようにしなさいと。
かんたんそうでとても難しいことに僕ははっとしました。

そして、お辞儀とは相手に感謝を伝えるもの。
単に深々とお辞儀をすればよいというものでもありません。
姿勢を正して、静かに頭を下げる。
頭が下がったと思ったところで一度止める。
下げた時よりもゆっくりと上げる。
このゆっくりと頭を上げることが大事だと。

お辞儀だけでなく、立ち方、そして歩き方など、
普段からいつも自分を客観視すること。
少し離れたところから自分を見て、
美しいかどうかを確かめる。

所作が美しいと、人から好かれ、愛されます。
どんな仕事でも人から愛されないとやっていけません。
そのためのことなのです。

一番簡単なことが、実は一番むつかしい。
一番簡単なことを美しく行うことができるようになれば一人前です。
美しさとは、やさしくて、やわらかく、静かで、ゆるやかなことです。

その方はこうも教えてくれました。

何ひとつこわばってはいけません。
こわばりを取る方法を教えましょう。
いつも口角を少し上げるように気をつけることです。
口が笑顔になると、目がやさしくなります。
目がやさしくなると、顔からちからが抜けて、
自分の一番美しい顔になります。
一日に何度も自分の顔を見るといいですよ、と。

次回は字の書き方をお話します。

それではまた。
今日もていねいに。

松浦弥太郎

エッセイスト、クリエイティブディレクター

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