2021/12/15

今日もていねいに。48

みなさん、こんにちは。
お元気でしょうか。

昔、京都の知恩院前にあった、
一澤帆布という布で作ったかばん屋さんで、
肩掛けのかばんを買いました。

丈夫な帆布で作られたかばんは、
使い勝手がよくて、今でも愛用しています。
人気ですので、みなさんもよく知っているかと思います。

そんな一澤帆布のはじまりはご存知でしょうか。
増田れい子さんのエッセイに書かれているのですが、
戦争中のことです。
店を営むご夫婦が、お子さんのために、
小さな肩掛けかばんを余った布でこしらえたのがきっかけで、
いろいろな用途のかばんを作るようになったといいます。
増田さんが店に通っていた頃、
その最初の小さなかばんは、
店の柱にぶら下がっていたそうです。

子どものために作る。
子どもでなくても、大切な人のために作る。
これって手を使うもの作りの原点なような気がします。
たとえば料理もきっと同じではないでしょうか。
いいものとはこうして作られるのだと思います。
今ある多くの優れたものがなぜ優れているのか、
それはすべて大切な人のためから始まっているのです。

わたしたちは毎日、仕事や暮らしの中で、
何かしらを作っていますね。
そのとき、仕方なくではなく、いつもだからではなく、
仕事だからではなく、言われているからではなく、
「なぜ?」作っているのか。

このことを自問し、答えをきちんと確かめること。
確かめたその自分の思いが、
今日も作るいいものを、
もっといいものへとしていくのだと思います。

それではまた。
今日もていねいに。

お風邪を引かぬようにあたたかくお過ごしください。

松浦弥太郎

松浦弥太郎

エッセイスト、クリエイティブディレクター

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