2022/01/12

今日もていねいに。51

みなさん、こんにちは。

お正月休みに母と話していて、
はっとすることがありました。

テレビから流れる数々のニュースを観ながら、
「こわいね……」「どうなるんだろう?」と、
僕がふと言うと、
「でも、こわい気持ちや不安な気持ちがあったから、
人間は生き延びてきたんだと思うの……」と、
母がポツリと言いました。

日々抱くこわい気持ちや不安な気持ちは、
ある種のストレスと思っていて、
できれば避けたいし、無くしたいと思っていた僕は、
母が何気なくつぶやいた言葉が、
あまりにポジティブだったので驚いたのです。

こわいとか、不安とかは、
弱いことであって、心で思っても、
人に言わないほうがいいという観念があったからです。

どうしようもなくこわい気持ち、
どうしようというような不安な気持ち、
これらとしっかりと向き合って、
なんとか克服しようという気持ち、
逃げずに工夫をする、
そのとき、
勇気が生まれたのではないか。
勇気という発明によって、
僕ら人間は生き延びてきたのです。きっと。

「こわがりの人って長生きするのよ。
あなたは子どもの頃からこわがりだったから大丈夫」。
母はこう言って笑いました。

強がることはない。
こわがりでいい。
なんだかとても勇気が湧いてきました。

勇気。

それではまた。
今日もていねいに。


松浦弥太郎

松浦弥太郎

エッセイスト、クリエイティブディレクター

関連記事