2022/03/16

今日もていねいに。58

みなさん、こんにちは。
お元気でしょうか。
すっかり春めいてきましたね。

つい先日のことです。
散歩気分で生まれ育った家を訪ねてみました。
もう何十年ぶりのことです。

あの日あの頃の風景が、
すっかり変わっていました。
家は無くなり、
コインパークになっていました。

ふらふらと近所を歩いて、
懐かしい風景はないかと探しました。
けれども、ほとんどが新しくなっていて、
自分の記憶と重なるものはほんのわずかです。
昔に比べたら、どこも小ぎれいになっています。

あっちに行ったり、こっちに行ったり、
知っているあの道この道をうろうろと歩いていると、
あることに気づきました。

風景は変わっているけれど、
道というか地面はまったく変わっていません。
小道や路地といった細い道ほど(迷路のような)、
地面のでこぼこや模様のような表情はも昔のままです。
アスファルトではない砂利道もそのまま残っていました。

ここで転んだし、ここに落書きをしたし、
ここで遊んで、ここで泣いたり笑ったりしたなあと、
道からいろいろなことを思い出しました。

まだ幼かった自分がヨイショヨイショと歩いた道。
学校の帰りに友だちと喧嘩して泣きながら歩いた道。
好きだった同級生と一緒に歩いた道。
時代が過ぎて風景が大きく変わっても、
ほとんどの道はそこにそのまま残っています。

その日の夜、
歩きながら思い出したこと、
感じたこと、考えたことを日記に書き残しました。
忘れかけていた自分が好きだと思っていた道が、
こんなにたくさんあったんだと嬉しくなりました。

道はいつまでもある。

当たり前ですが、
僕にとっては宝ものを見つけた気分でした。

それではまた。
今日もていねいに。

松浦弥太郎

松浦弥太郎

エッセイスト、クリエイティブディレクター

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