2022/06/15

今日もていねいに。70

みなさん、こんにちは。
いかがお過ごしでしょうか。

プレゼントというのは、
いつだって嬉しいですね。

思い返して一番うれしかったのは、
小学一年性の時、母からもらった子犬でした。

両親は共働きでした。
学校が終わって家に帰ると、
家はいつもシーンとしていました。
けれども、子犬がやってきてからは、
僕が帰ると、
子犬は手がつけられないほどに喜んでくれて、
僕のそばから離れません。
誰もいないさみしさは吹き飛んで、
毎日家に帰るのが楽しみになりました。

子犬にはジョンという名をつけました。
ジョンは捨てられていた子犬でした。
目がくりくりしてかわいい雑種です。



当たり前ですが、ジョンは言葉を話せません。
だからこそ、僕はいつもジョンの気持ちを思い、
ジョンが何を考えて、何が嬉しくて、何が悲しいのか、
そういうことをジョンの目や仕草で感じ取って、
相手を思いやるということを学んだのです。
今思うと、他人を愛するという心が、
はじめて芽生えたのでした。

ジョンは僕の家族であり親友でした。
たくさん遊んで、たくさんさわり合って、
いろんな場所へ行って、いろんな思い出を作りました。
ジョンは僕が19歳になるまで長生きしました。

ジョンの大好物はマンゴーでした。
次に好きなのは梨で、果物好きの犬でした。

昨日、台湾の友人から、
採れたてのマンゴーが届きました。
いい香りが部屋に拡がります。

早速、切って食べました。
気のせいかもしれませんが、
「ワン!」とジョンの声が聞こえました。

そうそう、おいしいおやつは、
なんでも半分コにしていたことを思い出しました。


マンゴーを半分お皿に分けました。
僕はジョンが大好きでした。

もう一度ジョンを抱きしめたい。

それではまた。
今日もていねいに。

松浦弥太郎

松浦弥太郎

エッセイスト、クリエイティブディレクター

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