2021/05/05

今日もていねいに。18

こんにちは。松浦です。
みなさんは連休をいかがお過ごしでしたか。

僕はマラソンと読書、料理、仕事を少しと、
母の介護といつもと変わらずの日々でした。
マラソンも最近はジムのトレッドミルですので、
ほぼ外出せずに過ごしていました。
同じ時間に起きて、同じ時間に寝るというように、
とにかく淡々としています。
それが今の自分には心地よいのです。

つい先日、母がこんな話をしてくれました。
それは母が若い頃に、おかあさんから言い聞かされたことでした。
母はその言葉をずっと忘れずに心の中で大切にしていたそうです。
その話をみなさんに少しお話しさせてください。

母が「これをして損をした」とか、
「こうすれば得をするのに」と言葉にしたときに、
「損得でものごとを考える癖をつけたらいけません。
そんな大人になったらいけませんよ」と、
祖母から強く叱られたそうです。

母が「どうして?」と聞くと、
「損得だけで考えたら、正しい判断ができなくなるから」と、
祖母は教えたそうです。

誰だって得をしたい。損はしたくない。
そう思うのが自然です。
けれども、損得を考える前に、もっと広い視野を持って、
その先に起こるべくことに想像力を働かせ、思いをはせる。
損得ではなく、自分に尽くせることはあるのだろうか、
自分ができること、するべきことは何かを考えることが大切であると、
祖母は諭したのです。

自分が持っている中から、
何かを与えると思うから、損をすると考えるのであって、
そうではなく、やさしい心遣いで尽くすほど、
心を寄せるほどに、
本当の意味で、他人や社会はあなたを理解し、
心からあなたに感謝をし、
あなた自身もその経験によって大きく成長できるのです、と。

「徳は本なり、財は未なり」ということわざがあるように、
物事の「得」ではなく、人間としての「徳」という宝ものを、
献身によって身につけていく生き方が大切だと、
母は僕に話してくれました。

損する得する、増える減るで判断せずに、
心を尽くし、心を寄せることで、
いつだって「徳」というしあわせが生まれるのです。

今日もていねいに。
それではまた。

松浦弥太郎

エッセイスト、クリエイティブディレクター

関連記事