こんにちは。
松浦です。
なにかあるたびに読み返す一篇の詩があります。
高田敏子さんという詩人の「水のこころ」という詩です。
その詩には、冒頭に、
水はつかめない、水はすくうのです。
と書かれています。
手の指をぴったりつけて、そっと大切に。
そしてまた、水はつかめないから、
ふたつの手の中に、
そっと大切につつむのです。と。
高田さんは最後にこう書きます。
水のこころも。ひとのこころも。と。
何度も読んで、この詩に僕がひかれるのは、
人のこころというものは、
つかんではいけない。つかむものではない。
ふたつの手で、
やさしくそっとすくうこと。
ふたつの手で、
そっと大切につつむもの。
そっとすくうこと。大切につつむこと。
この人と関わるときの心をあらわした、
ふたつの言葉です。
もしや忘れていませんか。と、
高田さんは言ってくれています。
いわゆる詩人の詩ではなく、
家庭の人、普通に生きる人たちに、
母であり妻でもある高田さんは、
ありのままの自分の言葉を書き続けました。
高田さんの詩は、
生きることへの愛着にあふれています。
つらいことも、うれしいことも、
しっかりと自分と向き合い、
すべてを受け止めて生きてゆこう。
高田さんは僕らにそう教えてくれています。
人の心はつかむのではなく、
すくうのよ。つつむのよ。と。
高田さんは15歳のとき、
最愛のお父様を亡くし、暗い毎日を過ごしていたといいます。
そのとき、彼女を救ったのは書くことでした。
自分の気持ち、自分の思い、自分の苦しみを、
生きる目的として書くことでした。
誰かが読んでくれるかもしれないという、
小さな希望を抱いて。
そう、小さな希望を抱いて。
それではまた。