2022/06/08

今日もていねいに。69

みなさん、こんにちは。
お元気でしょうか。

先日の日曜のことです。
おいしい思い出をあれこれと、
母と互いに言い合って楽しみました。

可笑しかったのは、
そこで挙がった食べものが、
おしんこやふりかけ、煮こんぶ、
玉ねぎのおみおつけなど、
なんてことのない家庭料理ばかりです。

「いちばんはおいしい梅干しが入ったおむすびね」
と母は言いました。
僕は「お味噌を塗ったおむすび」と言いました。

子どもの頃、おやつ代わりに、
母がよく握ってくれた小さなおむすびがあります。
表面に白味噌をていねいに塗ってくれていて、
そのなんとも言えない甘さがおいしくて、
今でも忘れられない母の味です。

ということで、
その日のお昼ごはんは、
二人でおむすびを作ることになりました。

僕は母が大好物の、
紀州南高梅を選んで、
おむすびを握りました。

母にも白味噌を塗ったおむすびを握ってもらいました。
驚いたことに、握力がなくなって、
鉛筆も落としてしまう母でしたが、
おむすびはらくらくと握れるのです。

今日のお昼ごはんは、
梅干しの小さなおむすびと、
白味噌の小さなおむすびを一つずつ。
熱い緑茶も淹れました。

母のおむすびを食べるのは何年ぶりでしょう。
かたちはでこぼこですが、
そうそう、この味この味!と、
懐かしすぎて涙が出そうになりました。

母も僕が握った梅干しのおむすびを、
おいしいおいしいと食べてくれました。

楽しくて嬉しくて、
おいしいお昼ごはんでした。

胸がいっぱいになりました。

それではまた。
今日もていねいに。

松浦弥太郎

松浦弥太郎

エッセイスト、クリエイティブディレクター

関連記事