第29回手帳大賞 結果発表

第29回手帳大賞にたくさんのご応募
ありがとうございました。

「名言大賞」に45,328作品、
「アイデア大賞」に2,152作品、
合計47,480作品のご応募の中から、
審査員をみごとにうならせた受賞作品を
発表いたします。

名言大賞 受賞作品

  • 大賞作品

    きょうは誰を喜ばそうかな

    小林 純一 こばやし じゅんいち 74歳 介護福祉士 (宮城県)

    【 発言者 】
    紙芝居活動先の園児
    【 背景 】
    「朝、起きたら、先ず何を考えるかな?」と尋ねたときの延長保育の園児たちが言った言葉。年長~年小さん80人程の中で、心に残るつぶやきでした。
    【 大賞寸評 】
    • 手帳に毎日これが書いてあり、空欄が付いていたら素晴らしい。(いとう)
    • 老若男女どんな立場の人が発してもいい言葉。みんながこんな心意気を持っていると、世の中がとてもよきものになりそう。気持ちを前向きに立て直すときにも効果を発揮すると思う。(東)
    • 自分のことでいっぱいいっぱいになりがちな時代に、まっすぐ利他的。「きょうは」と、毎朝問いかける言葉は手帳との親和性も高い。ほんの少し企みのある疑問形も心地良く、読み手が自分事として受け取れる力を持っている。(平野)
  • 審査員特別賞

    いとうせいこう賞

    わたしはいま!くもをあびていまーす!

    佐藤 恭子 さとう きょうこ 43歳 パート (埼玉県)

    【 発言者 】
    【 背景 】
    学童のお迎え時間がいつもより遅くなり、寒くて、雨が降っていて、帰宅後の忙しさにイライラと焦っている帰り道。雨合羽を着て全身で雨を楽しんでいる娘の言葉におもわずにっこり。
    【 作品寸評 】
    • 雨が降っていることを地球サイズで喜んでいるポジティブさ。言葉もかわいい。(いとう)
    • 雨が雲から降ってくることを思い出させてくれて、雨の意識が変わる詩的な力がある。雨に濡れることの新鮮な醍醐味。(東)
    • 大人には雨、子どもには雲のシャワー。気象を祝福に言い換える一行が、苛立ちを瞬時に翻してくれる。世界の名付け直しは、子どもの持つ魔法だと思った。(平野)
  • 審査員特別賞

    東直子賞

    「おっ」という間の、人生でした。

    森山 淳一 もりやま じゅんいち 58歳 会社員 (東京都)

    【 発言者 】
    祖母
    【 背景 】
    98歳で他界した祖母の、言い残したセリフです。祖母曰く「日本人の平均寿命は、70歳とか80歳とかだから、〈あっ〉という間の人生でしょう。けれど、私は98歳まで生きさせてもらったから、〈あ・い・う・え・お〉の〈あ〉ではなく、〈お〉まで生きさせてもらった感じかな?」と、冗談混じりに言っていました。
    【 作品寸評 】
    • 「あ」ではないだけに、どんな感情を呼ぶ人生の一幕ずつがあったのか知りたくなる。(いとう)
    • 遊び心があり、引きつけられた。人生の終わりが見えた人の言葉だが、独自のユーモアを込めて表現し、周りの人を和ませる力もあり、素晴らしい。(東)
    • 〈あっ〉ではなく〈おっ〉が選ばれる、その終わり際の一音に至った時間の厚みを笑いとともに感じることができる。軽やかだが、どこか重く、やさしく、長く残る、魅力的な言葉。(平野)
  • 審査員特別賞

    平野紗季子賞

    人生はね、ちょっとずつ足りないの
    だから楽しいのね

    粟飯原 純佳 あいはら すみか 28歳 フリーター (徳島県)

    【 発言者 】
    見知らぬご婦人
    【 背景 】
    見知らぬご婦人もとい見知らぬ、おばあちゃんからもたらされる何気ない会話から発生する説得力と納得感。沈んでいた気分が「そっかー」と思うと同時にお日様に照らされた心地でした。
    【 作品寸評 】
    • この言葉をもらったら、欠けたことを悲しんでばかりいる自分がつまらなくなるに違いない。(いとう)
    • ついつい不足に対する不平を言いがちだけど、足りないからこその味わいや楽しみがある。深みのある言葉だと思う。(東)
    • 欠けを欠陥ではなく余白として抱く、生活の哲学に満ちた言葉だと思った。自分の人生に何かが足りていないと思いがちなところを、ポジティブに変換してくれる。おしゃべり調のぬくもりが、難解な思想をさらりと飲み込ませやすくしている。(平野)
  • 優秀賞

    ぼく、大きくなったら何にもならないんだ!

    飯塚 瞳 いいづか ひとみ 33歳 主婦 (長崎県)

    【 発言者 】
    息子(5歳)
    【 背景 】
    「大きくなったら消防士になる!」「ぼく化石掘る人になる!」「ショベルカー運転する人にもなりたいなぁ」といろんな夢を日頃から話していた息子がある日突然言った言葉です。驚きつつも理由を聞くと「お母さんと一緒にいられるでしょ? お母さんのことだーいすきだもん。」と。「お母さんもあなたのことがだーいすきだよ!」とギューっとしました。将来が不安すぎる言葉とその裏にあった可愛すぎる意味のギャップが凄くて印象に残っています。次の日にはまた「警察の人になる!」と張り切っていました。いろいろ経験して考えてなりたい自分を見つけていってね! 応援してます!
    【 作品寸評 】
    • 必ず何かにならなければいけないと押しつけてくる社会に、このフレーズを叩きつけてやりたい。(いとう)
    • 子どもはよく何になりたいかを言わされちゃうところがあるので、それに対するアンチテーゼとしてはっとさせられた。(東)
    • 子どもの無邪気な発言にこそハッとさせられることがある、と感じた象徴的な言葉。〈ならない〉は否定ではなく解放。職業が未来を輪郭づけるとは限らない。何であるかより、「一緒にいる」という在り方を選ぶ宣言に痛快さと愛情を感じる。(平野)
  • 優秀賞

    全ての痛みは成長痛

    佐藤 亘晟 さとう こうせい 29歳 サービス業 (東京都)

    【 発言者 】
    会社の後輩
    【 背景 】
    同棲していた会社の後輩が一人暮らしになった時に言っていた。自身も経験があるので「これよりつらいことないよな」と聞くと「全ての痛みは成長痛ですから」と返ってきた。プラス思考とユーモアが融合した良い響きだなと素直に感心した。
    【 作品寸評 】
    • ユーモラスに、そして説得力をもって「明日」への成長を促してくれる。(いとう)
    • 物理的な痛みも心の痛みも、全部これから成長するための痛みなのだと思うと、その辛さを乗り越えていけるエネルギーになる。(東)
    • 起きたことの痛みに、そっと意味をあてがう言い方だ。痛みを消すんじゃなく、向きを少し変えて持ち直す次の一歩を少し楽にする、心の整体のような言葉。(平野)
  • 優秀賞

    今ね、まぶたに幸せが乗っかっているの。

    横山 涼 よこやま りょう 30歳 (東京都)

    【 発言者 】
    【 背景 】
    二人でこたつに入り、アイスを食べていた冬の夕方。もぞもぞと横になった妻が目を閉じていたので「眠くなっちゃった?」と聞いた時の返事です。ささやかな日常を暖かく表現できる彼女が素敵だなと思いました。
    【 作品寸評 】
    • つむった目のことをこんな風に表現すること。それが幸せをもたらしてくれる。(いとう)
    • 眠くて仕方がないときに、寝てる場合じゃないのにと思ったりするが、幸せが乗っかっていると思うと気持ちが楽になる。(東)
    • 眠くなっている時の生理的反応が、幸せという情緒的なものを象徴しているという面白さ。情景が広がる美しさ。そのような視点があるということを知るだけで感受できる幸せが増える、出会えて嬉しい言葉。(平野)

名言大賞 審査員プロフィール

  • いとうせいこう

    いとうせいこう

    1961年生まれ、東京都出身。1988年に小説「ノーライフキング」でデビュー。1999年、「ボタニカル・ライフ」で第15回講談社エッセイ賞受賞、「想像ラジオ」で第35回野間文芸新人賞受賞。近著に「鼻に挟み撃ち」 『「国境なき医師団」を見に行く』「小説禁止令に賛同する」「今夜、笑いの数を数えましょう」「ど忘れ書道」「ガザ、西岸地区、アンマン」「福島モノローグ」「われらの牧野富太郎!」「今すぐ知りたい日本の電力」「ラジオご歓談!爆笑傑作選」「東北モノローグ」「能十番」「見仏記 三十三年後の約束」などがある。みうらじゅんとは共作『見仏記』で新たな仏像の鑑賞を発信し、武道館を超満員にするほどの大人気イベント『ザ・スライドショー』をプロデュースする。現在はnoteで「ラジオご歓談!」「見仏記」を配信中。音楽活動においては日本にヒップホップカルチャーを広く知らしめ、日本語ラップの先駆者の一人である。現在は、ロロロ(クチロロ)、いとうせいこう is the poetで活動。テレビのレギュラー出演に「ビットワールド」「こころ忍術 ポポまる!」(Eテレ)などがある。

  • 東 直子

    東 直子

    歌人、作家。1996年「草かんむりの訪問者」で第7回歌壇賞、2016年『いとの森の家』で第31回坪田譲治文学賞受賞。歌集『春原さんのリコーダー』『青卵』、小説『とりつくしま』、歌書『現代短歌版百人一首 花々は色あせるのね』、エッセイ集『一緒に生きる』、書評集『レモン石鹸泡立てる』、児童書『くまのこのるうくんとおばけのこ』など。最新刊は小説『ひとっこひとり』。「東京新聞」「オール讀物」等の短歌欄選者。

  • 平野 紗季子

    平野 紗季子

    フードエッセイスト、フードディレクター。小学生から食日記をつけ続け、慶應義塾大学在学中に日々の食生活を綴ったブログが話題となり文筆活動をスタート。
    雑誌・文芸誌等で多数連載を持つほか、ラジオ/podcast番組「味な副音声」(J-WAVE)のパーソナリティや、NHK「きみと食べたい」のレギュラー出演、菓子ブランド「(NO) RAISIN SANDWICH」の代表を務めるなど、食を中心とした活動は多岐にわたる。著書に『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)、『味な店 完全版』(マガジンハウス)など。

アイデア大賞 受賞作品

  • 優秀賞

    イチニチ マルっとログ

    平田 摩美 ひらた まみ 39歳 (長崎県)

    【 アイデア概要 】
    日記も一緒に書ける1日1ページのログノートで、健康・食事・ファッションなどその日1日のすべてをマルっと記録することができます。
    【 アピールポイント 】
    日々の細かい記録を記載する際、「起床時間」「体重」などの項目名を毎回書くのが大変で面倒だったため、すでに項目名が印字された日記帳(記録ノート)があればいいなと考えました。日々のログをつけることで心や体の変化や異変にも気づけるという利点があり、手帳やノート好きの人はもちろん日々の備忘録としていろいろな世代の人に受け入れられるのではないかと思います。
    【 アイデアの背景 】
    最近、動画などでも多くの手帳や日記のチャンネルが発信されていて、自分で線を引いたり工夫してログをつけているのを見かけるが、1日1ページログはあまり見かけない。日記なども一緒に書けるスペースもある1日1ページログノートもあってはいいのではと思った。
    イチニチ マルっとログ
    【 作品寸評 】
    日々の暮らしをまるごと記録することを目的とした、1日1ページのライフログ手帳です。気分を顔マークで表す欄や、今日のコーディネートをイラストで残す欄、三食の食事内容、ニュースのハイライト、よかったこと、起床・就寝時間など、生活のあらゆる側面を細かく分類して記録できるレイアウトが特徴です。派手さはないものの、日々の記録に寄り添う堅実なアイデアとして高く評価されました。近年注目されている「ライフログ」という手帳の使い方にもマッチしており、誰もが気軽に始められる点も魅力です。日常の積み重ねが未来の自分をつくる——そんな思いを形にした本作品は、多くの人の生活に寄り添う手帳としての可能性を秘めています。
  • 優秀賞

    Sun Tango Diary

    川瀬 絢士 かわせ けんと 30歳 (愛知県)

    【 アイデア概要 】
    • 毎日たった3単語で記録するシンプルな日記帳。
    • 1カ月ごとに約90単語(3単語×約30日)たまった中から、その月を象徴する3単語を選ぶ。1年後に1,095単語(3単語×365日)たまった中から、その年を象徴する3単語を選ぶ。
      ⇒1日を3単語で表す、1ヵ月を3単語で表す、1年を3単語で表すという直感的なデザイン。
    【 アピールポイント 】
    何を書けばいいか分からない、変わり映えのない毎日で書くことがない、書く時間がない、続かない、書いて終わりになってしまう。日記にまつわる悩みをデザインの力でやさしく解決。同じように見える日々の中から、ふとした感情や出来事を3つの言葉ですくいとり、みんなが使いやすい新しいかたちの日記帳です。振り返る仕組みがあるから、記録することの楽しさや意味を感じられます。
    Sun Tango Diary

    1カ月の記入例

    Sun Tango Diary

    1年のまとめページ例

    【 ターゲット 】
    • 日記をつけたことがない人、続かない人。
    • 親から子へプレゼント。小さい頃から「記録する」「継続する」習慣を育む一歩として、誕生日や入学などの節目に。
    • 文字を書けない未就学児にも。親子でつける、子ども自身の言葉で残す日記。
    • ご高齢の方など文字を書くのが難しい人の代筆日記として
    【 作品寸評 】
    毎日を3つの単語で記録するという、シンプルかつ斬新な日記帳の企画です。文章を書くことに抵抗がある方や、忙しくて時間が取れない方でも、3単語だけなら気軽に続けられる——そんな発想が、多くの共感を呼びました。「毎日上る太陽」と「即興で踊るタンゴ」にかけたタイトルも印象的で、日々の出来事や感情を即興的に切り取るというコンセプトが、自由で軽やかな記録体験を想起させます。月ごと・年ごとに振り返る仕組みもあり、単語の積み重ねが自分の一年を俯瞰する手がかりになる点も魅力です。書くことのハードルを下げながらも、記録する楽しさや意味をしっかりと感じられる本作品は、日記の新しいかたちを提案する意欲作として高く評価されました。
  • 優秀賞

    手間も無駄もプレッシャーもない手帳

    鈴木 美穂 すずき みほ 36歳 (神奈川県)

    【 アイデア概要 】
    ぎっしり書き込むほど忙しい生活ではないけれど、予定や仕事を大切に書き留めたい。ゆったりとした生活に寄り添う手帳があるとうれしい。そこで、見開きでざっくり無駄なく、日ごと、週ごと、月の総まとめが書ける手帳を提案。左ページに日ごとの予定をざっくり書き込み、右ページには週や数日のハイライトやメモを自由に残せます。下部には月の総まとめや目標などを見返せます。
    【 アピールポイント 】
    • 見開きページだけでパッとすべて確認できる。
    • 1ヵ月2ページ×12ヵ月=24ページで手帳欄がコンパクトに完結。そのため以降のページは自由度が高く、日付フリーのToDo欄、メモ欄、写真や付箋の貼付欄、健康管理に使えるグラフ欄など、各人の特性を充実させる手助けができます
    【 アイデアの背景 】
    • 大体の手帳は、月毎に小さく区分されたページ(月間)と、スペースが広く週や日毎に書き込むページ(週間)が離れています。「先週どうしたっけ?」「月頭は?」と前をペラペラと見返すのが手間です。
    • 「この日、丸々空白でスペースがもったいない」「この日は忙しくてスペースが足りない」「自分でピックアップして分けられるスペースがあれば…」。そんな不満の解決策として考えました。
    手間も無駄もプレッシャーもない手帳
    【 作品寸評 】
    月間の予定と振り返りを、見開き1ページでシンプルに記録できる企画です。左ページには月間ブロックと、その月のハイライト欄。右ページには「How was your week?」という問いかけがあり、週ごとの気づきや感想を自由に書き込める構成となっています。手帳にありがちな「毎日書かなければ」という負担を取り除き、使う人のペースに寄り添う設計が高く評価されました。記録のハードルを下げながらも、月ごと・週ごとの振り返りを促すことで、自然と自分自身を見つめ直す時間が生まれます。「手間も無駄もプレッシャーもない」というタイトル通り、肩の力を抜いて続けられる手帳のあり方を提案した本作品は、多忙な現代人にとって、まさに“ちょうどいい”手帳のかたちと言えるでしょう。

名言大賞 審査員プロフィール

今回、団体応募で
優れた作品を数多く応募してくださった
下記8校には感謝状と
記念品を贈呈いたします。

・学校法人協和学院 水沢第一高等学校(岩手県)
・日本大学 東北高等学校(福島県)
・武相高等学校(神奈川県)
・川崎市立 中野島中学校(神奈川県)
・兵庫県立 尼崎小田高等学校(兵庫県)
・大山崎町立 大山崎中学校(京都府)
・和歌山県立 箕島高等学校(和歌山県)
・学校法人出水学園 出水中央高等学校(鹿児島県)