2022/08/24

今日もていねいに。79

みなさん、こんにちは。
いかがお過ごしでしょうか。
少しだけ秋めいてきましたね。

だいぶ昔、手帳に書いた文章を読み返してみて、
今の自分はどう考えるのだろうと
思うことがときどきあります。

「美しさとはなにか」という題がありました。

読んでみましょう。

ぱっと見て、美しいと感じるもの、
もしくは、美しいとわかるものは、
ほんとうの美しさではないのではないかも。

なぜなら、美しさとは、
心を精一杯にはたらかせて探すものであり、
その上で、やっと見つけられるもの。

美しさとは、誰かが教えてくれたり、
待っていれば、どこかからやってくるものでもなく、
そう簡単に見つけられるものではない。

けれども、ぱっと見て、美しい、もしくはきれい、
すてき、と感じさせる、表面的な美しさが、
今の世の中にどんなに多いことか。

では、美しさとはなんでしょう。
きれいなもの、と答えたら、
きれいなものとはなんでしょう。
なぜ、きれいなのでしょうと自問してみる。

美しさとは、
親切と真心、そして工夫のあらわれ。

人が人を一所懸命に思う心そのもの。
人が人というのは、
誰かが誰かをでもありますし、
自分が自分をということでもあるでしょう。

そういう姿勢やはたらき、夢中の先に、
ふわっとまばゆく輝くひかりのような。

目には見えない。
けれども、あたたかくて、
やわらかで、限りなく安心する確かなもの。
そして深い悲しみのような。
今の自分を助けてくれる大きなやさしさ。

だからこそ、美しさは、
ぱっと目に入って、すぐにわかるものではなく、
一生懸命になって自分で見つけるもの。

心から喜んだり、
心から悲しんで感じるその何か。
その自分で見つけた美しさは、
どんなに時が経っても決して忘れることはなく、
時が経てば経つほどに、
いつまでも自分の心の中に、
ひかりとなってあり続けるような……。

ここまで読んで、

美しいとは何か。
今日はもう一度、
しずかに考えてみようと思いました。

そういう一日があってもいいですよね。

それではまた。
今日もていねいに。

松浦弥太郎

松浦弥太郎

エッセイスト、クリエイティブディレクター

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