2021/07/28

今日もていねいに。30

こんにちは。松浦です。
毎日暑いですね。
みなさん、連休はどんなふうに過ごしていましたか?

僕はというと、テレビやスマホ、パソコンから離れて、
もっぱら読書の日々でした。

そこで改めて思ったのは、
読書というのはとても贅沢だなあということです。

何が贅沢かというと時間の使い方です。
本を開いて、ページを繰って、一字一字読むというのは、
自分なりのリズムとペースがありますね。
ときには戻ったり、止まったりもします。
休日ですから急ぐ必要がありません。
開いた1ページをゆっくりと味わったり。

今やあらゆることがスピード化し、
どんどんと次へ次へと進む時代です。
さっきまで新しかったことが、ちょっと目を離したら、
もう古いものになっていて、その早さについていくのが大変。
日々、仕事も暮らしもそんなふうにせわしく動いています。

そんな中、あえて、そういうものから離れた休日でした。

座り心地のよい椅子に腰をおろして、
お気に入りの一冊、
たとえば、何度も読んでいる新見南吉の一冊などを手にし、
静かな部屋で自分のペースで、
書かれているひとつひとつの言葉に目を落とす。
その言葉たちが繰り広げる物語は、
目から心へ、心から身体にじんわりと広がっていきます。

ときに目をつむったり、ときに空想したりしながら、
庭の置き石をひとつひとつ踏むように読んでいく。
何かに急かされることなく自由に。

そのひとときは、時計とは関係のない時間です。
そんな読書の先には、失っていたかもしれない本来の自分が見つかります。
あ、そうそう、僕にとって大切なことはこれだった、
求めていたものはこういうことだった、というように。

そんなふうに自分を整えることって、
最新のものから離れてみないと気づかないし、思い出せないし、
取り戻せないのかもしれません。

そう思うと、読書とは自分との対話ですね。
なんて贅沢なことなのでしょう。
みなさんは自分とどんなふうに対話していますか?

それではまた。
今日もていねいに。

松浦弥太郎

エッセイスト、クリエイティブディレクター

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